私は渡英した中学2年生当初、英語圏の現地校で教育を受けるにはあまりにもお粗末な英語力しか身に着けていなかった。
小学2年生から4年生までの2年ほどを英語圏で過ごした経験があったため、そりゃあ「純ジャパニーズ」に比べたら多少は英語ができたかもしれないが、ネイティブに混じって高等教育を受けるには圧倒的に語学力が不足していた。
言うまでもなく、英国のパブリックスクールで教育を受けるとは、「英語の」勉強をするのではなく、「英語で」勉強することである。つまり、基本的な英語の読み書きはできて当たり前なのである。
渡英当初、私はある程度まとまった分量の英語の文章を書く経験すら不足していた。
なので、入学前に留学生向けの語学学校で半年ほどみっちり研修を受けることを条件に渋々入学を許可された始末であった。
そんな状態であったから、たかだか半年の語学学校の研修で何とかなるはずもなく、結局私は圧倒的に英語力が足りないまま由緒正しき英国パブリックスクールに入学することになってしまった。
イギリスの中学にはGCSEという全国共通の中学卒業試験のようなものがあって、中学生の間は基本的にGCSEの受験に向けて勉強する日々を送ることになる。
GCSEは英語、数学、理科など必修の基本科目の他は、生徒各自が履修する科目を選択するようになっている。
学校によって選択することができる科目は大きく異なっており、我が母校では
- 歴史
- 地理
- デザイン&テクノロジー (略してDT)
- 美術
- 音楽
- ドイツ語
- フランス語
- ラテン語
- 物理
- 化学
- 生物
- PE(体育)
というバラエティー豊かな布陣であった。
理科は必修科目なので全ての生徒が履修する必要があるが、理科系が得意な生徒は「理科」という1単位ではなく、「物理」「化学」「生物」それぞれ独立した科目で1単位ずつ、合計3単位選択することが可能である。その分、内容も高度になることは想定どおりである。
「PE (Physical Education)」というのは、日本ふうに言えば「保健体育」のようなものなのかと思っていたが、話を聞くと体育大学で学ぶような「スポーツ科学」に近い内容のようだった。
デザイン&テクノロジー(DT)というのも耳慣れない科目であるが、やっている内容を聞くと美術とマーケティングの中間みたいなもので、たとえば商品のパッケージなんかをデザインして、「売れる商品」とは何かをデザインの観点から研究するような科目であった。
さて、英語が壊滅的にできない私にとっては、「英語ができなくても何とかなる科目」を選択することが死活的に重要であった。
GCSEの成績は、高校に進む際はもちろん、その先の大学入学にまで影響してくる非常に重要なものである。
当初の予定では高校入学あたりで私は日本に帰国することにはなっていたが、先の予定なんていつどう転ぶか分からないから、ボロボロの成績では後々の進路に響いてしまう。
というか、そもそも日本の高校に編入させてもらうためにも、ある程度の成績は確保しておかないと非常にまずい。
というわけで、英語ができなくても何とかなる科目を吟味しなければならない。
結論から言うと、私は「英語」「数学」の必修科目の他、
- 物理
- 化学
- 生物
- 美術
- 音楽
を選択することになった。
とりあえず理科については、生物はともかく、物理と化学は英語力よりも論理的思考と計算力がものをいう分野だから、それほど英語ができなくても何とかなりそうである。なので、「理科」として1科目選択するのではなく、物・化・生で3科目分の枠を埋めてしまう作戦である。
美術は、英語力よりも絵画の技法やセンスがものをいう科目だから、力技で何とかなるとの思惑である。
音楽も美術と似たようなもので、楽器を弾いて歌を歌ってお茶を濁せば何とかなるとの思惑である。
結果的に、いずれの選択科目も英語力が無くて何とかなるような甘いものではなく、私の当初の思惑はことごとく粉砕されることになるが、それは追々記録していくことにしよう。
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